人と心が打ち解けて、友達になれる瞬間は、とても感動的です。

相手の第一印象が悪く、「コイツとは、絶対に仲良くなれない!」と心の中で感じていた場合は、一生の想い出に残るような素敵な瞬間に変わります。

そして、音楽は、そんな一生の想い出を演出してくれる『心を結ぶパスポート』だと感じます。

そんな友情を演出してくれた想い出の楽曲が『一本の音楽』でした。
この楽曲は当時、maxell(マクセル)カセットテープのCMソングに使われていましたね。

キャッチコピーが『OUTDOOR PERFORMANCE ~ 外に連れ出す一本の音楽』で、とてもカッコイイCMだったと思います。

当時は、好きなアーティスト達の楽曲を一本のカセットテープに録音していく作業は、とても大変でしたよ(笑)。現在のように自由にダウンロードして、短時間にアプリに落としていくなんて、夢のまた夢でした。

レコードに慎重に針を落として、当倍速で時間をかけて、自分だけの『一本の音楽』ライブラリを作っていく時代です。

レコード針が落ちる瞬間の「ボッ」という音が、そのままカセットテープにも録音されていたり、録音時間の計算が微妙に合わずに最後の楽曲が尻切れになったりしましたね(笑)。

今、思うと懐かしい想い出です。

あの時代は、そんな自分の音楽ライブラリをバイトの休憩時間に聴いたりすることもありました。

当時は、ウォークマンもありましたが小さなラジカセ(死語ですかね)がバイト先の休憩室にあり、自由に音楽を聴くことができたんですよ。

ある日、村田和人さんのアルバム『ひとかけらの夏』をCMで使われていた『maxell XLI』というカセットテープにそのまま録音して聴いていました。

ちょうど『一本の音楽』が流れていた時、背後から『そのカセット、貸してくれる?』という声がして、ふり返ると、バイト先で口喧嘩や口論ばかりしていた相手が立っていました。

最初は「何だ!コイツ!」と思いましたよ。

「それ、カセットテープのCMで流れてた曲でしょ? いい曲だよね!」という、彼の笑顔につられて、自分も笑顔で「村田和人の『一本の音楽』だよ!」と答えてました(笑)。

数日後、その彼から稲垣潤一さんの『ドラマティック・レイン』が収められたカセットライブラリを貸りることになりましたね(笑)。

そこから彼との友情が生まれたことを思い出します。

今夜は、そんな想い出の溢れるライブに行ってきましたよ!

吉祥寺のライブハウス「STAR PINE’S CAFE」で行われた『ステイ・ザ・村田 ~村田和人トリビュート・ライブ』です。

このチケットを取ることは、たぶん、無理だと思いつつも、e + (イープラス)のチケット申し込みでタイミング良くゲットできましたが、1分もしないうちに完売となっていました。

まさに『奇跡』という感じです。

村田和人さんは、とても残念なことに今年(2016年)の2月22日に永眠されました。

しかし、村田さんに影響を受けた多くのアーティスト達が、今夜、このライブハウスに集結し、村田さんの功績に対するトリビュート(賛辞を贈る)ライブです。

村田さんと言えば、デモテープを聴いた山下達郎さんが村田さんを高く評価して「もし、このシンガーが世に出なかったら『電話しても』を自分で歌おう」と思ったほど惚れ込んだミュージシャンです。

そして、山下さんが唯一プロデュースしたミュージシャンでもあります。

また、このライブでは、個人的に『二人の杉サマ』として尊敬する杉山清貴さんと杉真理さんが同じステージで見れることにも期待していましたよ!

自分にとっては「ダブルレジェンド(二つの伝説)」が目の前に現れることに興奮しましたね。

この二人は、かつて一緒のステージに上がったことがあるのでしょうか?

それ以外でも、スタレビ(Stardust Revue)の根本要さんや1976年に大瀧詠一さん、山下達郎さんと『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』のメンバーだった伊藤銀次さんにも注目していましたよ!

そして、このライブ!『奇跡』の連発でしたね!

このライブ会場『STAR PINE’S CAFE』には、18:25頃に到着。

既に300人の開場待ちの行列が...

決して広くはない、このライブハウスに300人!

自分は、今まで見たことないです。

整理番号が140だったので、後ろかと思っていたら何と3列(一列100人くらい)の真ん中の列の真ん中辺りに並びましたよ!

この人数を見て、最初はヘコタレましたね。この人数でオールスタンディングとは...

でも、自分の後ろに並んでいた女性の方が『オールスタンディングだけど、せっかく新潟から来たんだから、杉山さんの歌を聴くまで帰れない!杉山さんの歌を聴くまで死ねない!』と話していた声が聞こえて、自分もボルテージ上がりましたよ!

自分も頑張る!死ねないぞ!

超満員のスタンディング

超満員のオールスタンディング

超満員のライブは、杉真理さんからスタート!

『今日は、村田ちゃんは、ここにいると思います。メソメソしてると怒られます!なので、楽しんでいってください!』と、明るく始まりましたよ!

杉真理さん→鈴木雄大さん→斉藤誠さん→斉藤哲夫さん→伊藤銀二さん→杉山清貴さん→根本要さん→杉真理さんへと戻り、全体的には、賑やかで楽しい村田和人さんをトリビュートした楽曲で包まれた素晴らしいライブでした。

今回、印象に残った楽曲は、斉藤哲夫さんの『頭の中一杯につづく長い道』ですね。

村田さんが生前、この曲を気にいってよく歌ったそうです。

斉藤哲夫さん自身は、あまりこの曲は歌わなかったそうですが、天国にいる村田さんの為に、この一曲を歌う為に、来てくれてました。

斉藤哲夫さんが『彼(村田さん)とは、話したいことは、いっぱいあった。会う機会があまりなかったが、たぶん、センスは同じだった。』と静かに語り、その言葉に続いて『頭の中一杯につづく長い道』という楽曲を歌ってくれた時、何故か胸を打たれましたよ。

また『奇跡』という点では、伊藤銀二さんのギターで杉山清貴さんが『電話しても』を歌い、『Get Around The Night』を根本要さんと杉山清貴さんで歌ってくれたところですね。

そして、杉山さんも根本さんも、楽しい村田さんのエピソードを話してくれましたよ。

まず、杉山清貴さん

杉山さんが高校生の頃に本格的にデビューする前の村田さんのバンド「ALMOND ROCCA」をよく聴きに行って、その頃の村田さんの音楽にとても影響を受けたそうですが、その後、1991年に河内淳一さんと村田さんの三人でユニット『In ‘n Out』を結成しました。

コンセプトは、オリジナル曲を持ち寄ってやろうとなったそうです。

杉山さんは、しっかりと曲を作り、詞を書いて持っていくと、村田さんは「杉山、詞も書けるんだ!じゃ、俺の曲にも詞を書いて!」と無茶振りして、その楽曲のサビに『Miss You Baby』という言葉を使って、詞を書くことを命じられたそうです。

その楽曲がそのまま『Miss You Baby』というタイトルとなり、村田さんも結構、気にいってくれたそうですが、杉山さんは、いつの間にか、自分は『In ‘n Out』で作詞家になっていたと笑って話してくれました。

次に根本要さん

根本さんは、村田さんのアルバム「太陽の季節」でコーラスを頼まれたそうですが、現場で楽曲を見るとコーラスでなく、どう見ても二人のデュエットソングだったようで、根本さんのマネージャーも「村田さん、これは、困ります!」と抗議したそうですが、出来上がったアルバムには「根本要」のクレジットが一切、載っていなかったそうです。

その楽曲が『Get Around The Night』で、今日はこの曲を誰かと歌おうと思い「今日のメンツでアゴで使えるのは、杉山しかいねえ!」ということで、杉山さんとのデュエットとなったそうですよ。

しかし、天下の『杉山清貴』をアゴで使うとは、恐るべし『スタレビ』といった感じでしょうか?

二人とも、凄く楽しく、懐かしい想い出のように語っていたのですが、内容はとてもハードなものと思いましたね(笑)!

でも、村田さんの憎めない、明るい人柄がとても生かされていたエピソードでした。

この二人に限らず、杉真理さんや斉藤誠さん、鈴木雄大さん、伊藤銀二さん、村田バンドの方々からも楽しい村田さんのエピソードが聞けましたよ。

しかし、ラストは、驚きの演出でしたね。

ステージには、村田バンドはいるのですが、センターマイクに誰もいません。

突然、スピーカーから村田さんの歌う『ビートルズを聞いてはいけません』が流れ、ステージ上では、それに合わせた村田バンドの演奏だけが...

誰もいないセンターマイクにライトだけがあたり、本当に惜しい人を亡くしたと誰もが感じたと思います。

その瞬間、ライブ会場にいた全ての人が涙したと感じました。

こんな、終わり方は、寂しすぎますよ...

でも、アンコールで、また『奇跡』が!

最後は、飛び入り参加の山田稔明さんをメインボーカルに『一本の音楽』を出演者全員で歌ってくれましたよ!

同じ、ステージに杉山清貴、杉真理、根本要、伊藤銀二、斉藤誠、鈴木雄大、etc…

凄い『奇跡』じゃないですか!

今回は、オールスタンディングが苦にならない、もの凄いプレミアライブでしたね!

自分にとって、村田和人さんの楽曲は『夏のOpen Airに微風を運んでくれる世界』だと感じます。

その数々の楽曲を素敵なミュージシャン達が見事にトリビュートしてくれました。

素晴らしいライブを演出してくれたアーティスト達に感謝します。

ライブが終わり、想い出が浮かんで、また消えて行く。

もう再生できない『一本の音楽』を収録したカセットテープ...
そこから芽生えた友情は、行方不明になったままです。

彼は、今、何処で、何をしているのだろう...

素晴らしいライブが終わり、感動した気持ちとほんの少しの寂しさが交錯した夜。

夜の微風が『心配すんなよ!』と村田和人さんの声を運んでくれた気がします。

そして、音楽で結ばれた友情が永遠に続くと思えた素晴らしい夜でもありました。

楽曲「一本の音楽」から

君の好きな歌をいつもポケットに入れて
一本の音楽が僕の旅のパスポート
昨日までのわずらわしさ やぶり捨ててしまえ...

作詞:安藤芳彦
作曲:村田和人

村田和人_fix

カセットテープと、そこから芽生えた友情